産廃許可の更新で経理的基礎の特例が廃止|2027年4月の改正前に決算書で見る3つの数字

愛知県が、産業廃棄物処理業の更新許可申請だけに設けていた「経理的基礎」の特例を廃止し、改正後の審査基準を令和9年(2027年)4月1日から適用すると公表しました(愛知県「産業廃棄物処理業の『経理的基礎に関する審査基準』の特例を廃止します。」2026年9月18日更新/当社確認日 2026年10月12日)。
影響を受けるのは、ごく限られた決算状況の事業者です。先に結論を書きます。
- 法人で、直前事業年度の自己資本比率が0%未満(債務超過)、かつ直前3年間の経常利益金額等の平均がマイナス、かつ直前事業年度の経常利益金額等もマイナス——この3つがすべて重なる場合。
- 改正前の基準では、この組み合わせでも更新許可申請に限り、経営診断書を添付して立て直しを示す道が残されていました。改正後は、申請の種類による区別がなくなります。
- 新規許可・変更許可の基準は変更ありません(県の公表に明記)。もともとこの組み合わせは不許可の扱いです。
該当しそうなら、いま見るべきは次の更新の期限ではなく、いま締めようとしている決算です。理由を順に書きます。
何が変わるのか:消えるのは表の「1行」だけ
愛知県は「経理的基礎に関する審査の考え方」という表で、自己資本比率と経常利益金額等の組み合わせごとに、経営診断書が要るか・原則認定か・不許可かを定めています。今回の改正で変わるのは、法人・個人それぞれの最終行です。
| 直前期の決算状況(法人) | 改正前(令和9年3月31日まで) | 改正後(令和9年4月1日から) |
|---|---|---|
| 自己資本比率0%未満/3年平均マイナス/直前期マイナス(新規・変更) | 不許可 | 不許可(変更なし) |
| 同上(更新) | 診断書(※悪化が新型コロナの影響によること等を証明) | 不許可 |
個人事業主も同じ構造で、「直前事業年度の資産が負債を下回り、かつ直前3年間、毎年所得税を納付していない」場合、更新だけに残っていた診断書の道がなくなります。なお県の注記では、納税額が0円の年は「納税していない」に当たるとされています。
廃止の理由も公表されています。新型コロナウイルス感染症が5類に移行して3年が経過したため、というものです。つまりこの特例は、もともと「悪化がコロナの直接的・間接的な影響によること」を証明できる場合に限った救済でした。使える前提が狭かった点も含めて、原則に戻ると理解するのが正確です。
自社が該当するか、決算書の3つの数字で確かめる
税理士に聞く前に、手元の決算書で粗く判定できます。順番は次の3つです。
1. 自己資本比率(直前事業年度)
純資産合計 ÷ 負債・純資産合計(総資産)× 100。0%未満=債務超過なら、以降の2つも確認します。0%以上なら、少なくとも今回の改正で消える行には当たりません。
2. 経常利益金額等(直前事業年度)
損益計算書の経常利益に、同じ損益計算書の減価償却費を足した額です。経常利益だけで見ないでください。車両や設備の償却が大きい収集運搬業では、経常赤字でも償却費を戻すとプラスになることがあり、判定が変わります。
3. 直前3年間の経常利益金額等の平均
同じ計算を3期分おこない、平均を出します。県の注記では、事業年度は6か月以上あるものを1期とみなすとされています。決算期を変更した期がある会社は、ここで数え方を間違えやすいところです。
3つすべてがマイナス側に振れていなければ、今回の改正の影響は受けません。1つでも外れていれば、別の行(原則認定、または「必要時診断書」)の扱いになります。「必要時診断書」には、直前期の自己資本比率がマイナス30%未満、流動比率(流動資産÷流動負債×100)が50%未満といった基準が別紙で定められています。
なお、営業実績が3年に満たない法人・個人は、改正の前後を問わず、今後5年間の収支計画に基づく中小企業診断士または公認会計士の経営診断書が必要です。設立間もない会社の扱いは、今回の改正では変わっていません。
いつ動くか:許可期限ではなく「決算期」から逆算する
収集運搬業の許可期限は5年(優良認定を受けた場合は7年)です。愛知県は提出時期の目安を「事業を営もうとする時期の約2か月前」とし、標準処理期間を39日(土日祝を除く)と公表しています。手数料は更新許可73,000円、新規許可81,000円です。
ここで注意が要ります。県の公表資料には「改正後の審査基準は令和9年4月1日から適用します」とあるだけで、申請日を基準にするのか、処分(許可・不許可)の日を基準にするのかは書かれていません。標準処理期間が39日あるため、2027年3月下旬に申請すれば処分は4月以降になります。該当しそうな会社にとっては、この一点で結論が変わります。
当社の見立ては、「該当しそうなら、許可期限が2027年4月以降でも、まず管轄の県民事務所に適用の時点を確認するところから始めるべき」というものです。根拠は2つあります。公表資料に時点の記載がないこと、そして不許可になった場合でも申請手数料も診断書の費用も申請者の負担だと県の注記に明記されていることです。出してみて駄目だった、が最も高くつきます。
確認する窓口は、更新の場合は現在の許可証の交付を受けた県民事務所等です。新規申請とは窓口の考え方が違うので、間違えないようにしてください。
もう一つ。自己資本比率は決算を締めた時点で確定します。増資や資産の整理といった打ち手は、期をまたぐと次の決算まで効きません。許可期限が2027年以降に来る会社ほど、見るべきは期限ではなく、いま進行している事業年度です。
診断書を出せば通る、ではない
改正後も「診断書」の行は数多く残ります。その内容は、今後5年間の収支計画に基づき、5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを証明できることと定められています。
同時に、県は注記で「診断書の内容だけで経理的基礎の有無を判断するものではない」とはっきり書いています。診断書は、決算の数字を説明し、立て直しの道筋を示す書類であって、審査を通す切符ではありません。許可の可否を決めるのは、あくまで申請先の審査です。当社も、許可を保証する言い方はしません。
自治体によって扱いが違います
ここまでは愛知県知事の許可についての話です。愛知県内でも、名古屋市・豊橋市・岡崎市・一宮市・豊田市は別の許可権者で、県の管轄から除かれています。これらの市で許可を受けている場合、審査基準や今回の特例廃止がそのまま当てはまるとは限りません。必ず当該市の窓口で確認してください。県外に許可を持つ場合も同じです。
「経理的基礎」という要件は法律(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づきますが、具体的な判断基準は許可権者ごとに定められています。他県の解説記事をそのまま自社に当てはめないことが、この分野では一番の安全策です。
よくある質問
改正後は、赤字だと更新できなくなるのですか?
いいえ。不許可の扱いになるのは、債務超過・3年平均マイナス・直前期マイナスの3つがすべて重なる場合です。どれか1つでも外れていれば、原則認定か、経営診断書を添付する行の扱いになります。
特例はいつまで使えますか?
県の公表では、改正後の基準の適用開始は令和9年4月1日です。それまでの扱いについては、申請日と処分日のどちらを基準にするかが公表資料からは読み取れないため、管轄の県民事務所への確認が必要です。
新規許可を取る予定ですが、関係ありますか?
今回の改正は更新許可申請の特例の廃止で、新規許可・変更許可の基準は変更されないと公表されています。ただし新規申請でも、経営状況によっては経営診断書の添付が必要です。
該当しそうなときの相談先
当社は中小企業診断士が、産業廃棄物処理業の許可申請に使う経営診断書を作成しています。料金は成功報酬・全額後払いで、不許可の場合は料金が発生しません。許可が出るまで何度でも追加費用なしで再作成します。必要書類がそろっている場合は、最短で翌営業日に納品した実績があります。
まずは直前期の決算書で、上の3つの数字を確認してください。そのうえで判断に迷う場合は、経営診断書の作成(産廃許可申請)のページからご相談ください。決算書をお預かりすれば、どの行に当たるのか、診断書が要るのかどうかから整理します。
本記事は2026年10月12日に愛知県の公表資料で確認した内容です。審査基準は改正されることがあり、許可の可否は申請先の審査によります。最終的な判断は必ず管轄窓口にご確認ください。
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