産廃許可の新規申請は黒字でも経営診断書が要る|愛知県の審査基準で自己判定する手順

産業廃棄物処理業の許可で「経営診断書」が必要になるのは、赤字や債務超過の会社だけではありません。直前期が黒字でも、会社が若ければ財務内容と無関係に診断書を求められます。そして新規許可申請には、更新申請にある救済の特例が適用されません。
この記事は、愛知県が公表する審査基準の原文をもとに、自社の決算書だけで「診断書が要るかどうか」を判定する手順をまとめたものです。制度の概要は産廃許可の経営診断書とは?をご覧ください。
結論:新規申請で診断書が要るのは2パターン
- 営業実績が3年未満(=財務内容を問わず、無条件で必要)
- 直前3期の数字が基準に触れる(=赤字・債務超過・自己資本比率などの組み合わせで判定)
多くの方が想定しているのは2番だけです。1番を見落としたまま準備を進め、申請直前に診断書が必要と分かる——これが最もスケジュールの崩れるパターンです。
根拠となる法令の建て付け
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条は、許可の基準として「その事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合すること」を求めています(e-Gov法令検索/確認日2026年9月29日)。
この「環境省令で定める基準」の中身が、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第10条第2号ロ(収集運搬業)および第10条の13第2号ハ(特別管理産業廃棄物)です。つまり法律は「経理的基礎が必要」としか書いておらず、具体的な数値基準は各自治体が審査基準として定めています。同じ決算書でも、申請先によって結論が変わり得るのはこのためです。
愛知県の審査基準:決算書から拾う3つの数字
愛知県は「産業廃棄物収集運搬業(積替保管を除く。)の経理的基礎に関する審査基準」(令和3年9月6日改正)を公開しています(PDF/確認日2026年9月29日)。判定の軸は次の3つです。
①「経常利益金額等」は経常利益そのものではない
最も間違えやすいのがここです。審査基準でいう「経常利益金額等」とは、損益計算書上の経常利益に、同じ損益計算書上の減価償却費を足し戻した額を指します。
収集運搬業は車両という減価償却資産を抱える業種です。車両を入れ替えた期は経常利益が赤字でも、減価償却費を足し戻すとプラスに転じることが珍しくありません。「赤字だから診断書が要る」と早合点せず、必ず足し戻して計算してください。
②直前3期の平均、③直前期の債務超過
拾うのは次の3点です。
- 直前3期の各事業年度における経常利益金額等の平均額が0以上か
- 直前期の経常利益金額等が0以上か
- 直前期が債務超過でないか(純資産がマイナスでないか)
1つでも満たせば「原則、基礎あり」
愛知県の基準は、この3つのいずれか1つに該当すれば足りる構成です(第1の1)。3つすべてを満たす必要はありません。逆に言えば、3つすべてを満たせない会社だけが崖の際にいます。
ただし1つ満たしていても安心はできません。第1の2は、次の組み合わせに当てはまる場合に診断書の添付を求めています。
- 平均も直前期もマイナスで、直前期の自己資本比率が0%以上10%未満
- 平均がマイナス・直前期がプラスで、直前期が債務超過
- 債務超過に加えて、自己資本比率がマイナス30%未満、または流動比率(流動資産÷流動負債)が50%未満
自己資本比率は純資産÷総資本×100で計算します。10%・0%・マイナス30%・流動比率50%——このあたりが愛知県の分岐点だと押さえておけば十分です。
新規・変更申請には救済の特例がない
愛知県は新型コロナウイルスの影響を踏まえ、3つの基準をいずれも満たせない場合でも、5年間の収支計画に基づく経営診断書で経理的基礎を疎明できる特例を設けています。
ただし県の告知には「この特例は更新許可申請のみに適用され、新規許可申請及び変更許可申請には適用されません」と明記されています(愛知県公式サイト/2024年3月15日更新・確認日2026年9月29日)。
県公開の「経理的基礎に関する審査の考え方」の一覧表でも、自己資本比率0%未満かつ平均マイナスかつ直前期マイナスの行は、更新なら「診断書」、新規・変更なら「不許可」と書き分けられています。
なお特例は「当面の間」の措置です。適用の有無は申請時点で必ず窓口にご確認ください。
設立3年未満は、黒字でも診断書が必要
審査基準の第3は、営業実績が3年未満の法人・個人について、収支計画に基づく経営診断書を添付し、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることを証明できることと定めています。財務内容による例外はありません。
実務上の注意点が2つあります。事業年度は6か月以上あるものを1期とみなすと注記されていること。そして分社化や法人成りの会社は、実態の事業歴が長くても法人としては「3年未満」になることです。
当社の見立てでは、この第3こそ準備のボトルネックになりやすい規定です。財務が基準に触れるパターンは決算書を見れば予想がつきますが、設立3年未満という理由は財務が健全なほど盲点になるからです。会社設立から許可取得までを一続きで設計することをおすすめします。
明日できること:決算書3期分から6つの数字を拾う
手元に直近3期分の決算書をご用意ください。拾うのは6項目だけです。
| 拾う数字 | どこから | 使い道 |
|---|---|---|
| 経常利益(3期分) | 損益計算書 | 経常利益金額等の計算 |
| 減価償却費(3期分) | 損益計算書 | 同上(足し戻す) |
| 純資産合計 | 貸借対照表(直前期) | 債務超過・自己資本比率 |
| 負債合計 | 貸借対照表(直前期) | 総資本の算出 |
| 流動資産合計 | 貸借対照表(直前期) | 流動比率 |
| 流動負債合計 | 貸借対照表(直前期) | 流動比率 |
判定は次の順序で進めます。
- 設立から3年(6か月以上を1期として3期)経っているか。経っていなければここで確定、診断書が必要です。
- 各期の「経常利益+減価償却費」を計算し、3期平均と直前期の符号を確認する。
- 直前期の純資産がマイナスかどうか(債務超過の有無)を確認する。
- 2と3で1つもプラス側がなければ、新規・変更申請では極めて厳しい状態です。申請前に窓口と専門家へご相談を。
- 1つ以上プラス側がある場合は、自己資本比率と流動比率を計算し、10%・0%・マイナス30%・50%の線と照合する。
ここまで自社で出しておくと、窓口相談も専門家への依頼も一往復で済みます。
判断基準は自治体で異なる
ここまでは愛知県の基準です。他県では枠組みそのものが違います。
たとえば宮城県は、追加資料を求める基準を自己資本比率・直前3年間の経常利益の平均値・直前期の経常利益の組み合わせで示しており、該当する場合は県指定の様式に加えて、金融機関が発行した借入残高証明書と返済予定表の提出を求めています(宮城県公式サイト/2025年12月17日掲載・確認日2026年9月29日)。
注目すべきは、宮城県が「経常利益」で判定しているように読める点です。減価償却費を足し戻す愛知県とは、同じ決算書でも判定が分かれ得ます。この記事の数値をそのまま他県に当てはめないでください。
診断書を出せば許可される、ではない
愛知県の審査基準には「ただし、診断書の内容だけで経理的基礎の有無を判断するものではない」、さらに「不許可となった場合でも、申請手数料や診断書は申請者の負担である」と明記されています。
許可の可否を判断するのは申請先の自治体であり、当社を含むどの専門家も許可を保証できません。当社がお引き受けするのは、経理的基礎を疎明する書類を審査基準の論点に沿って作成する部分です。
当社にご相談いただく場合
FUN-CREATEは、中小企業診断士が産廃許可用の経営診断書を作成しています。上の注記——不許可でも診断書の費用は申請者負担——を踏まえ、次の条件でお受けしています。
- 成功報酬・全額後払い。不許可の場合、当社の料金は発生しません。
- 許可取得まで何度でも再作成します(追加費用なし)。
- これまでに再提出となった案件はありません。
- 必要書類がそろっている場合、最短翌営業日での納品実績があります。
「設立3年未満で新規申請を予定している」「直前期が債務超過で更新が近い」——どちらの段階でも、決算書をお預かりすれば申請先の基準に照らした見立てをお伝えします。事業者様からも行政書士の先生からのご依頼にも対応しています。
詳細は産廃許可の経営診断書作成サービスをご覧ください。
まとめ
- 診断書が要るのは「財務が悪いとき」と「設立3年未満のとき」の2パターン
- 愛知県の「経常利益金額等」は経常利益+減価償却費。足し戻さずに判断しない
- 3つの基準のいずれか1つを満たせば原則OK。すべて外すと新規・変更は不許可の対象
- 更新申請にある特例は新規・変更には適用されない
- 基準は自治体ごとに異なる。申請先の審査基準を必ず確認する
産業廃棄物処理業(収集運搬業・処分業)の許可申請・更新でお困りの事業者様・行政書士の先生へ。中小企業診断士を中核とした専門家チームが経営診断書を全国対応・成功報酬・全額後払いで作成します。

