設立3年未満の産廃許可は経営診断書がほぼ必須|愛知県・名古屋市・東京都の基準を比べる

産廃許可の「経理的基礎」は、赤字や債務超過の会社だけの話だと思われがちです。しかし実務でつまずきやすいのは、設立してまもない会社、つまり営業実績が3年に満たない会社です。決算書が3期分そろわないため、そもそも通常の判定表に乗りません。
そして重要なのは、ここから先の扱いが自治体ごとにまったく別のロジックになっていることです。この記事では、愛知県・名古屋市・東京都の審査基準および必要書類一覧の原文(2026年9月1日確認)をもとに、その違いを整理します。
結論:愛知県・名古屋市では「営業実績3年未満」だけで経営診断書が必須になる
先に結論を書きます。財務内容が良いか悪いかにかかわらず、営業実績が3年に満たないという一点で経営診断書の提出を求める自治体があります。
| 自治体 | 営業実績3年未満の扱い | 診断書の作成者として明記された資格 |
|---|---|---|
| 愛知県 | 収支計画に基づく経営診断書を添付し、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることの証明を求める | 中小企業診断士または公認会計士 |
| 名古屋市 | 今後5年の収支計画書および経営診断書等の提出は「必須」と明記 | 中小企業診断士(登録証の写しも要求) |
| 東京都 | 設立直後で1期目の決算が未確定なら開始貸借対照表の提出で対応。診断書は債務超過等に該当した場合のみ | 中小企業診断士、公認会計士または税理士 |
同じ「設立2年目の会社」でも、申請先が変われば必要な書類が変わります。他県の情報や過去の申請経験をそのまま当てはめるのは危険です。
なぜ営業実績3年未満で扱いが変わるのか
根拠は法律ではなく施行規則にある
「経理的基礎」という言葉は、実は廃棄物処理法の条文そのものには書かれていません。法第14条第5項第1号は「申請者の能力が…環境省令で定める基準に適合するものであること」と定めるにとどまり、その環境省令にあたる施行規則第10条第2号ロが「産業廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎を有すること」と規定しています。特別管理産業廃棄物については、愛知県の審査基準が根拠条項として施行規則第10条の13第2号ハを挙げています。
3期分の決算書が出せないと、判定材料そのものが無い
申請書の添付書類を定める施行規則第9条の2第2項は、第六号で法人について「直前三年の各事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表並びに法人税の納付すべき額及び納付済額を証する書類」を求めています。あわせて第一号で「事業計画の概要を記載した書類」、第五号で「当該事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類」も必要です。
設立まもない会社は、このうち中核となる3期分の決算書を用意できません。そこで自治体は、過去の実績の代わりに将来の計画で継続性を疎明させるという発想に切り替えます。これが経営診断書(今後5年間の収支計画に基づくもの)が登場する理由です。
自治体別に原文を見る
愛知県:営業実績3年未満は独立した項目として扱われる
愛知県の「経理的基礎に関する審査基準」(令和3年9月6日改正)は、営業実績3年以上の法人、同じく個人、そして「第3 営業実績が3年未満の法人及び3年未満の個人の場合」を分けて定めています。第3では、収支計画に基づく経営診断書を添付し、今後5年以内に健全な経営の軌道に乗ることが証明できることを求めています。経常利益や自己資本比率による分岐はありません。
なお愛知県は、積替保管を含む場合と含まない場合で別の審査基準を用意しており、含む場合のほうが要件は厳しくなっています。ただしこれは営業実績3年以上の会社に適用される判定部分の話です。
名古屋市:診断士を単独で指名し、休眠会社も明示的に対象
名古屋市の必要書類一覧表は、「3 営業実績が3年間に満たない法人又は個人の場合」について、今後5年の収支計画書および中小企業診断士の経営診断書等の提出は必須であると明記しています。さらに「休眠状態(売上高がほとんどない)の場合は、営業実績がないものとみなします」との注記があります。設立から3年経過していても、実質的に動いていなかった期間があれば実績3年未満として扱われうるということです。
また名古屋市は必要書類として「中小企業診断士が作成した経営診断書」「中小企業診断士登録証の写し」と記載しており、他資格を併記していません。同じ愛知県内でも、県と名古屋市で書きぶりが異なる点は見落とされがちです。
東京都:判定ロジックがそもそも別物
東京都環境局「産業廃棄物収集運搬業許可申請の手引(新規・更新許可申請用)」(令和5年11月)は、確認リストの貸借対照表の欄に「設立直後の法人で1回目の決算が確定していない場合は、会社法第435条又は第617条に規定する貸借対照表(開始貸借対照表)を提出してください。その場合は、No.16〜No.19の書類は不要です」と注記しています。損益計算書等の提出が免除される扱いです。
そして東京都の財政能力の判定は、法人税の納税状況、債務超過の有無、返済不要な負債の有無という3段のチェックフローで構成されており、経常利益や自己資本比率という指標が判定条件に登場しません。該当した場合に求められるのは「経理的基礎を有することの説明書」で、中小企業診断士・公認会計士または税理士が作成し、資格を証明する書類を添付するものとされています。同手引には、提出を要する者がこれを提出しない場合は不許可処分となる旨も明記されています。
誤解しやすい4つの論点
1. 「開始貸借対照表を出せば済む」は東京都で確認できた話
開始貸借対照表による代替は、東京都の手引および宮城県の案内で確認できます。一方、愛知県・名古屋市の審査基準および必要書類一覧には「決算未了」「開始貸借対照表」という文言が見当たりませんでした。両自治体が同じ扱いをするかどうかは、公開文書からは確認できません。個別に窓口へ確認すべき事項です。
2. 求められる資格が自治体で違う
上の表のとおり、名古屋市は中小企業診断士、愛知県は中小企業診断士または公認会計士、東京都は税理士も含みます。「税理士に頼めばどこでも通る」とは言えません。依頼前に申請先の記載を確認してください。
3. 経営診断書と経営改善計画書は別の書類
名古屋市は、診断士が作成する経営診断書とは別に、診断に基づき申請者自身が作成する経営改善計画書を求めています(営業実績が3年以上ある場合)。専門家に丸投げして完結する書類ではありません。
4. 診断書を出せば通るわけではない
名古屋市の注記には「経営診断書の内容だけで経理的基礎の有無を判断するものではありません」とあります。また同市の判定表は、自己資本比率がマイナスかつ直前3期平均・直前期ともに赤字の場合を「不許可」として明示しています。診断書は判断材料の一つであり、許可を保証するものではありません。
設立まもない会社が申請前に準備すべきこと
- 申請先を確定させ、その自治体の審査基準・必要書類一覧の最新版を入手する(基準は改正されます。愛知県の審査基準本体は令和6年1月31日改正、経理的基礎の基準は令和3年9月6日改正です)
- 積替保管を行うかどうかを先に決める(愛知県・名古屋市では要否判定が変わります)
- 今後5年分の収支計画の材料をそろえる(想定台数、単価、契約先の見込み、人件費、車両の取得・維持費、借入返済予定)
- 事業開始に要する資金の総額と調達方法を整理する(施行規則第9条の2第2項第五号)
- 休眠期間があった場合は正直に整理しておく(名古屋市は営業実績なしとみなす旨を明記)
なお、愛知県の審査基準には新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた更新申請の特例が「当面の間」の措置として置かれており、2026年9月1日時点で公開PDF上に残っています。ただし今後も適用されるかは断定できないため、更新申請で該当しそうな場合は必ず窓口へご確認ください。
FUN-CREATEの経営診断書作成支援
当社は愛知県西尾市の会社で、中小企業診断士が産廃許可申請用の経営診断書を作成しています。営業実績3年未満のケースは、過去の決算ではなく収支計画の合理性で説明することになるため、事業内容のヒアリングに時間をかけます。
- これまでに再提出となった案件はありません
- 必要書類がそろっている場合、最短翌営業日での納品実績があります
- 成功報酬・全額後払い。不許可の場合は料金が発生しません
- 許可取得まで何度でも再作成します(追加費用なし)
- 全国対応(愛知県・三河地域は訪問も可能)
許可の可否は申請先自治体の審査によるものであり、当社の担当範囲は経営診断書の作成です。許可を保証するものではありません。料金の目安と進め方は経営診断書作成(産廃許可用)のページをご覧ください。
よくあるご質問
設立1期目で決算書が1枚もありません。申請できますか。
申請先によります。東京都の手引は開始貸借対照表での対応を明記しています。愛知県・名古屋市は営業実績3年未満の場合として収支計画書と経営診断書を求めており、決算未了の場合の具体的な取り扱いは公開文書からは確認できませんでした。窓口への事前確認をおすすめします。
黒字で財務も健全ですが、設立2年目です。診断書は不要ですか。
愛知県・名古屋市の文書上は、営業実績3年未満であること自体が提出要件になっています。財務内容が良好でも必要になると読めます。
顧問税理士に作ってもらえますか。
申請先の記載次第です。東京都は税理士を含めて記載していますが、名古屋市の必要書類一覧は中小企業診断士とその登録証の写しのみを記載しています。
行政書士の先生と分担できますか。
可能です。詳しくは行政書士の先生向けの記事をご覧ください。
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出典と確認日
本記事の制度に関する記述は、以下の公的資料を2026年9月1日に確認して作成しています。審査基準・必要書類は改正されます。実際の申請にあたっては、必ず申請先自治体の最新版と窓口へのご確認をお願いします。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件の許可可否を判断するものではありません。
- e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第14条 / 同法施行規則 第9条の2、第10条
https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137 / https://laws.e-gov.go.jp/law/346M50000100035 - 愛知県「産業廃棄物収集運搬業の許可」審査基準・提出書類一覧
https://www.pref.aichi.jp/site/gyoute/12050.html - 名古屋市「(特別管理)産業廃棄物収集運搬業許可」必要書類一覧表
https://www.city.nagoya.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/026/286/r0804syuuunnitirannhyou.pdf - 東京都環境局「産業廃棄物収集運搬業許可申請の手引(新規・更新許可申請用)」令和5年11月
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/01_syuun_shinki_koushin_0511-pdf - 宮城県「産業廃棄物収集運搬業の許可における経理的基礎について」
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/haitai/syukeiri-index.html - 静岡県「産業廃棄物処理業(収集運搬業・処分業)許可関係」
https://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/recycle/sangyohaikibutsu/1049463/1017727.html
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