ホームページのリニューアルは本当に必要か|EC9サイトを20年運営する会社の5つの判断基準

結論:「売上が落ちたから作り直す」は順序が逆です
リニューアルのご相談で最も多いのが「売上が落ちてきたので、そろそろ作り直したい」というものです。当社がまず行うのは、見積もりの提示ではなく原因の切り分けです。サイトが原因でない売上減は、作り直しても戻らないからです。
当社は自社ECを9サイト(本店4+モール5)、20年運営しています。その間、作り直した判断も、作り直さなかった判断も、自分たちの商品とサイトで何度も通ってきました。そこから言えるのは、売上の増減だけでは、作り直す理由にも、作り直さない理由にもならないということです。数字をどう分けて読むかで、打ち手はサイト側にも商品側にも振れます。
以下、当社が自社の9サイトで毎月使っている判断の順序を公開します。読み終えたときに、御社の数字で「作り直すべきか」をご自身で判定できる状態になることを目指しました。
リニューアルの要否を決める5つの判断基準
基準1|落ちたのは「客数」か「単価」かを先に分ける
売上は客数×客単価×購入回数に分解できます。サイトの出来が強く効くのは主に客数(流入数×購入率)です。客数が横ばいで客単価だけが落ちているなら、価格競争や商品構成の問題であり、デザインの刷新では解けません。当社も自社の主力カテゴリでこの切り分けを行い、サイトではなく商品構成と価格の見せ方を直す判断をしています。
明日できること:直近12か月を月別に、注文件数・客単価・リピート率の3つに分けて並べてください。受注管理のデータだけで出せます。この1枚の有無で、リニューアルの議論の質は変わります。
基準2|比べる相手は業界平均ではなく、自社の去年
当社が運営する2店舗の実数です(2026年7月時点・注文データ集計)。
- 応援うちわ専門店:平均客単価 4,212円/リピート率 7.6%
- オリジナルグッズ本店:平均客単価 8,110円/リピート率 10.9%
同じ会社が同じ体制で動かしている2店舗でも、客単価は約2倍、リピート率は3ポイント以上違います。商材と購入動機が違えば数字は違って当然です。「業界平均より低いからリニューアル」は根拠になりません。比べる相手は去年の自分で、見るべきは水準ではなく変化の方向です。
基準3|サイトに書いてあることが、今も事実か
当社も間違えていました。ポスターフレーム専門店で長く「500種類以上」と掲載していましたが、カタログを数え直すと200種類台で、2026年9月5日に全ページの表記を「200種類以上」へ修正しています。RPA導入実績も、掲載していた数字は当時の実態としては正しかったものの、その後の統廃合やAI化で運用が変わったのに掲載が追いついていませんでした(現在の稼働は20業務)。
デザインが古いことよりも、書いてある数字が実態と合っていないことのほうが、はるかに信用を損ないます。この点検に制作費はかかりません。種類数・実績・料金・対応エリア・会社情報の5点を、今日中に見直してください。
基準4|流入はあるのに成果が出ないなら、問題は着地ページ
当社はChatGPTなどのAI検索経由の流入をGA4で毎月実測しています。2026年7月3日〜8月1日の実測では、AI検索から来た人の着地ページ上位は取引先向けページと採用ページで、サービスページにはほとんど着地していませんでした。流入はあるのに問い合わせが発生しない月もあります。
当社の見立ては、これはサイトを作り直して解く問題ではなく、着地ページの設計の問題だというものです。人が実際に入ってくる入口と、こちらが用意した入口がずれているだけで、ずれたまま作り直してもずれは引き継がれます。
明日できること:GA4の「ランディングページ」レポートで流入上位10ページを出し、1ページずつ「次にしてほしい行動」が置かれているかを確認してください。置かれていないページが上位を占めるなら、作り直す前にやることがあります。
基準5|詰まっているのは、サイトではなく受注後の業務ではないか
当社は自社EC運営にRPAを導入し、現在20業務を自動化して月61時間・年730時間を削減しています。断言できるのは、サイトの見た目を変えても受注後の手作業は1分も減らないということです。
問い合わせ1件あたりの処理時間を測ってください。すでに処理能力の上限なら、問い合わせを増やす投資は逆効果です。投資先は業務側になります。
よくある失敗パターン3つ
失敗1|原因を特定しないまま、全面的に作り直す
デザイン・URL構成・導線・コンテンツを一度に変えると、数字が動いても動かなくても理由が分かりません。費用以上に次の判断材料を失うことが痛手です。何を変えたから何が動いたかを、後から言える単位で変えてください。
失敗2|公開をゴールにする
公開日に向けて全員が走り、公開後は誰も触らない。これが最も多い失敗です。後述の補助金の公募要領でも、運用に至らなかったサイトは対象外とされています。制度の側も「作って終わり」を支援対象と見ていません。
失敗3|自分たちで直せない作りにする
種類数も実績も料金も毎年変わります。更新のたびに外注の見積もりと納期が必要な作りにすると、やがて誰も直さなくなり、数年後にまた「古いから作り直したい」が始まります。要件定義で最初に決めるのは「社内の誰が、どの頻度で、どこを更新するか」です。
補助金を使う場合、ウェブサイト費用には上限があります
小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回の公募要領(第8版・商工会地区/2026年10月7日確認)から、要点を抜き出します。
- 補助上限は50万円、補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)
- ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。必ずほかの経費と一緒に申請します
- ウェブサイト関連費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)
- 申請受付は2026年11月5日(木)開始、締切は12月15日(火)17:00
- 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切は2026年12月4日(金)
- 50万円(税抜)以上で作成・更新したサイトは処分制限財産に該当し、通常は取得日から5年間、処分が制限される場合があります
- 補助事業期間内に運用に至らなかったホームページ・ランディングページは補助対象外です
実務上の締切は12月15日ではなく、様式4の12月4日です。商工会・商工会議所での発行には時間がかかるため、10月中に計画の中身を固める必要があります。制度は改定されますので、申請前に必ず最新版の公募要領をご確認ください。
作り直す前の90日間、この順番で進めてください
- 1〜2週目:数字の棚卸し。月別12か月の注文件数・客単価・リピート率を1枚にする
- 3〜4週目:事実の点検と修正。種類数・実績・料金・会社情報を現在値に直す
- 2か月目:流入上位10ページの着地設計を見直す。各ページに次の行動を置く
- 3か月目:ここまでで数字が動かない場合に限り、構造からの作り直しを検討する
この順番なら、最終的に作り直すことになっても何を直すべきかが分かった状態で要件定義に入れます。「どんなデザインにしますか」から始める発注とは、費用対効果が変わります。
よくあるご質問
Q. 何年経ったらリニューアルすべきですか?
A. 年数では決めません。客数・客単価・リピート率の推移、掲載内容と実態のずれ、流入上位ページの着地設計、受注後の処理能力の4点で判断します。ただしスマートフォン対応や常時SSLのように要件を満たしていない場合は、年数に関係なく優先します。
Q. 売上が落ちたのは、サイトが古いせいでしょうか?
A. まず客数と客単価のどちらが落ちたかを確認してください。客単価だけが落ちているなら、主因は価格競争や商品構成にあることが多く、作り直しても売上は戻りません。客数(流入×購入率)が落ちているなら、集客か着地ページの問題で、ここで初めてサイトを疑う順番になります。当社も自社ECで同じ順序で切り分け、作り直さずに商品と価格の側を直した判断をしています。
Q. 補助金でホームページは作れますか?
A. 持続化補助金ではウェブサイト関連費のみの申請はできず、この経費の上限は30万円(税込)です。制作費を単独でまかなう制度ではありません。
ご相談について
当社は自社ECを9サイト(本店4+モール5)、20年にわたって運営し、広告も自社で運用、AI検索経由の流入も自社サイトで実測しています。ここに書いた判断基準は、説明のために作ったものではなく毎月自分たちのサイトで使っているものです。
制作会社として「作り直しましょう」と言うのが一番簡単です。ですが当社は、作り直さないほうがよい場面を自社で何度も経験しています。まずは現状の数字を一緒に見るところから。ホームページ制作・改善のご相談をご覧ください。
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